特異な暗号放送 日本人拉致事件と関連か



 北朝鮮による日本人拉致事件が多発した1978年、工作員に向け暗号を読み上げる北朝鮮の乱数放送(A−3)にそれまでと違った特異な形式による放送が始まっていたことが当時の受信記録から明らかになった。
 中波と短波を使った北朝鮮の乱数放送は1970年代後半から1980年代前半かけて活動が最も活発であった。いくつかの系統があり、早朝から深夜まで朝鮮語で数字を読み上げていた。特異な形式が始まったのは、午前零時から短波の4700kHzを使い、「総動員歌」で始まった系統。この系統を含め、北朝鮮の暗号放送はそれまで数字を万、千、百、十の位をつけて読んでいたが、同年5月9日、この系統に数字を一桁づつ読み上げる形式が初登場した。以後、月に2,3回の割合で出現した。
 この形式の放送は本国人でない工作員支援者に対して、電文の聞き取りを容易にするための措置であった可能性が高い。拉致請負組織の存在も疑われており、拉致事件と何らかの関連があったことをうかがわせる。「総動員歌」で始まるこの系統の暗号放送は1984年1月に中止になった。
 4700kHzは1970年ごろから、北朝鮮の乱数放送に使われており、現在もモールス通信(A−1)に使われている。
 なお、北朝鮮の乱数放送(A−3)は2000年までに、すべて廃止さている。

1978年中の同形式による放送の出現状況と拉致事件の発生

5月 9日 4・1・6号電文 14組
5月24日 4・0・1号電文 21組
5月28日 4・5・3号電文 24組

6月 9日 4・1・6号電文 11組
6月27日 4・1・6号電文 12組
6月28日 4・5・0号電文 3・5組

6月―7月 田口八重子 拉致
7月7日  地村保志、浜本冨貴恵 拉致


7月10日 4・0・1号電文 1・4組
7月26日 3・6・8号電文 2・6組
7月27日 4・1・6号電分 1・7組
7月28日 4・5・3号電文 6組

7月31日 蓮池薫、奥土裕木子 拉致

8月 9日 4・1・6号電文 1・6組

8月12日  市川修一、増元るみ子 拉致
       曽我ひとみ、ミヨシ 拉致
8月15日  拉致未遂事件


8月28日 4・5・3号電文 6組

9月24日 4・0・1号電文 13組

10月27日 4・1・6号電文 1・4組
10月28日 4・5・3号電文 15組

11月12日 3・6・8号電文 7組
11月28日 4・5・3号電文 16組

12月 9日 4・1・6号電文 7組
12月25日 4・8・9号電文 13組
12月27日 4・1・6号電文 7組


特異電文の実際


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(C)2002 アジア放送研究会

2002.10.20更新

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